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「女の知恵は針の先」第16回:関西フェミニズム旅行記2022・その2(フェミニスト手芸グループ山姥)

2022/11/14

 

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ山姥。この連載は、彼女たちが毎日生活したり活動したり、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれの記録です。今回は、2泊3日の「関西フェミ旅行」を敢行したふたりの、超充実したレポート・その2です。またしても過密スケジュールをこなしながら、ふたりが訪れた場所でのそれぞれの感想にとても考えさせられます。

 

6月18~20日の2泊3日で、山姥2人で京都・奈良・大阪フェミ旅行をしてきた報告その②です、かんなです。
気がついたら早くも4か月が経過していて、記憶が薄れつつあるのですが、なんとか思い出しつつ、前回 からの続きです。

≪2日目≫
泊まっていた大阪市内の宿を出発。早起き出来たらおいしそうなパン屋が近くにあるから寄りたいねと話していたけれども、まあ早起きできるわけもなく、朝ごはんはコンビニで済ませる。

奈良方面へ向けて移動。

水平社博物館

NHKの「バリバラ」という番組でコメンテーターの玉木幸則さんが水平社博物館に行く回があり、それがすごく良かったので、ぜひ展示を直接見てみたいと思い、今回足を運んだ。

奈良市内から距離があり、最寄り駅からも遠いので行くのはちょっと大変なのだが、展示内容はとても充実しており、わざわざ行ってよかった。

部落解放運動、水平社の歴史や運動についてわかりやすくまとめられているし、戦争中の翼賛体制に取り込まれてしまったという後悔と反省も展示に組み込まれている。

校外学習で来た子どもに興味を持ってもらうためか、『鬼滅の刃』の漫画が置いてあったりして、なんとかとっかかりを作りたいという館側の工夫を感じた。

要事前予約で別途料金だが、ボランティアガイドによる館内・館外フィールドワークもお願いできる。今回わたしたちは館外でのフィールドワークを予約して、博物館周辺のいくつかのスポットを巡った。各スポットには案内の看板も立っているのだけれども、ガイドしてもらいながら回ると、やっぱりもっとよく理解できたので、行く場合には予約するのがおススメ。

神社の中にある「建議の庭」と名付けられた広場。水平社のメンバーで土地の名義を共同で持ち、みんなの場所として、演説の練習や打ち合わせ、宴会などをしたとのこと。いつでもそこに行けば誰か仲間がいるような「場所」があるというのは大事だなと改めて

 

神武天皇社。神武天皇が即位した地と推測されているようだが、一説によると、この神社が宮跡と指定されると周辺住民は土地を奪われて移住させられるため、明治期の初めに証拠資料を住民がすべて焼いてしまったとのこと。水平社博物館を見た後だとなおのこと、この圧倒的な「身分制度」の権力性が感じられるエピソード。

見学後、京都へ移動。当然店に入ってゆっくりお昼ご飯を食べる時間はなく、駅の売店で柿の葉寿司を買い、立ったまま食べる。

● ウトロ平和祈念館

1階が交流スペース、2階が常設展示、3階が特別展示となっており、全体としてはそれほど大きいスペースではない。ただ、ウトロ地区の歴史や運動についてかなり丁寧にまとめてあるので、見学には時間にゆとりを持った方がいいと思う。

わたし自身もウトロ地区の歴史について詳しく知っていたわけではなかったので、展示を読み込んだ。泣いてもしょうがないんだけど、泣いてしまった。本当にいつも日本政府というのはなにもしなさがすごい。金を出さないのはもちろんのこと、謝罪もせず、自分たちの政策のせいで招いた結果にもまるで無関心で、それどころか圧力すらかけている。市民と運動の力のすばらしさを思う一方で、一貫して何もしないどころか、あまつさえ加害までする政府と行政の態度に眩暈がしてくる。

わたしたちが行った時、1階の展示スペースでガイドを受けている人たちがいて、一部一緒に話を聞いた。平和祈念館から少し離れている放火現場のスペースにも行くようだったので、ついていった。ガイドの方のお話を聞いて、せめてもの救いで誰も亡くならなかったけれど、それは本当に紙一重だったこと、ペットの犬は亡くなっていたことを知った。跡地は残っている柱などもどれも真っ黒になっていて、火の勢いを想像しておそろしくなった。この事件をヘイトクライムとして追求し、ヘイトクライムを許さないと犯人の意図を否定する姿勢が政府や行政、議員にないことに本当に腹が立った。

(後から、ガイドを受けていた団体の主催の方が、政治的な手芸部の参加者だったことが判明。世間せまいですね。)

中庭に移築された飯場内にある流し。火災現場にあったもので黒く焦げてしまっている。

そのまま、京都市内に移動。古本屋さんで待ち合わせて、お友達の岩間香純さんから紹介してもらったフェミニスト2人に初めましてする。そのまま一緒に食事へ。この日初めてお店に入って座ってごはんをたべる。インド料理屋さんだったのだが、おいしすぎて、皿についているカレーがもったいなく思えて、それらをすべてナンでぬぐって皿をぴかぴかにし、初対面のふたりをドン引きさせてしまう。京都行くときには次もまた絶対行きたい。

京都市内の宿に移動して、今日こそ早めに寝ようと誓ったはずなのに、なぜか『オレンジデイズ』の再放送を見ながら手芸をして夜更かし。

3日目に続く。

 

フェミニスト手芸グループ山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。