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「女の知恵は針の先」第14回:関西フェミニズム旅行記2022(フェミニスト手芸グループ山姥)

2022/8/15

 

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ山姥。この連載は、彼女たちが毎日生活したり活動したり、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれの記録です。今回は、2泊3日の「関西フェミ旅行」を敢行したおふたりの、超充実したレポートです。かなりの過密スケジュールではありますが、絶対行きたくなりますよー
 

6月18~20日の2泊3日で、山姥2人で京都・奈良・大阪フェミ旅行をしてきたので、今回はその報告①です! かんなです!

別にこれまで関西方面に行ったことがないわけではないのに、行きたいところがありすぎて超過密日程になってしまい、3日間で3回くらいしか店に入って食事をしなかった(時間がなさ過ぎてできなかった)。同じ時期に関西旅行をする予定だったお友達と向こうで落ち合おうかと行程表を見せたところ、どう考えても時間がないと断られてしまったレベル。なので、あまり旅程の参考にはならないかもしれません!

≪1日目≫
もろもろ用事があり、昼過ぎに東京発。新幹線で新大阪についたのは15時半過ぎ。大阪府内の天満橋まで移動し、まずはエルライブラリーへ。

・大阪産業労働資料館 エルライブラリー 
→ウェブはこちら

ここは労働運動についての資料を収蔵する図書館で、1日滞在しても時間が足りないほどの情報量なのだが、どんな施設なのか行くまでわたしたちもわかっておらず、今回は2時間ほどの時間しかなかった。

土曜日は事前に予約を入れれば開館してくれるのだが、書庫によっては立ち入れないこともあり、閲覧したい資料については事前に申請した。ただ、正直言って収蔵資料がありすぎて、リストすべては確認しきれず、「フェミニズム」、「リブ」などで検索したものから興味のあるものをピックアップしてお願いした。

労働運動関係の資料はもちろんだが、とにかくいろんなものがあって、横山ノックの選挙活動の詳細資料だとか、戦前の発禁雑誌だとか、そういうものが所狭しと並んでいる。
案内してくれた司書の谷合さんがひとつひとつについて詳しく教えてくれるのだが、こんなにたくさんの情報をどうやって整理して頭の中に入れてるんですかね!?という感じで、終始「へえええええ」と感心するしかなかった。

おもしろかったのは発禁(発売禁止)となった雑誌を見せてもらったこと。

2022年現在は、作家の原稿のままで書籍化されて読めるものもあるのだが、雑雑誌掲載当時は出版社の方で発禁になるのを防ぐため、事前に怪しそうなところは伏字にして出版したらしく、読んでみても、××という伏字がたくさんあって、何が書いてあるのかよくわからない。読者はいったいどのように推測しながら読んでいたんだろう、いくつも読んでいたら慣れてきて読めるようになるんだろうか。

見せてもらったのは、「蟹工船」が掲載された『戦旗』が「安寧秩序紊乱」を理由として発禁になった号。問題になったのは「蟹工船」の、×上品のカニの缶詰に石ころでも入れておけと言い合うシーンである。×上品は天皇への「献上品」という言葉を隠すためのもの。伏字が何を表すか想像しながら検閲して発禁にする特高、とてつもない害悪のわりにやっていることが間抜けすぎる。

時間が足りなかったのでまた行きたい!みなさまも来館される際にはできればお時間たっぷりをお勧めします。

18時ころ移動。エルライブラリーから次の目的地のドーンセンターは徒歩10分ほどの距離です。

・大阪府立男女共同参画・青少年センター ドーンセンター 情報ライブラリー
→ウェブはこちら

ずっと行ってみたかったドーンセンターの情報ライブラリー。

ここには松香堂出版から出ている、『資料日本ウーマン・リブ史』(全3巻)の原資料が収蔵されているので、司書さんにお願いすると実際に見せていただくことができる(写真など記録は禁止)。
その時代に生きていたらそれはそれで大変だったとは思うのだけれども、わたしはウーマン・リブのころへのあこがれが強いので、今回見せてもらうことができて、本当に良かった。

内容自体は『資料日本ウーマン・リブ史』で確認できるのだが、やはり手書きの文字の力強さや情報量の詰め込み具合を実際に目の当たりにすると、何十年越しかに受け取っても色あせない、エネルギーの大きさに圧倒されてしまった。やっぱり紙で残しておくとタイムカプセルみたいに誰かが受け取ってくれるかもしれないので、記録はがんばってつけていかないとなあという気持ちになった。

そして、情報ライブラリーのすばらしいところは司書さんがみなさんとても親切なうえにフェミニズム情報にめちゃ詳しいこと……!!!!
以前問い合わせした際に、関東のイベントの情報を教えていただけて、どれだけアンテナを張っているんだ……とびっくり&尊敬しかない。
メールレファレンスも可能なので、フェミニズムについての調べものがある場合にはおススメです。

そして栗田隆子さんに教えていただいていた、ドーンセンターロビーでやっていた展示にも行ったのですが、これがまたすごくて、こんな運命的な出会いがあるのかと感動……。

・2秒の視線展 辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動
→詳しくはこちら

15年以上、毎週土曜日に大阪駅御堂筋南口駅前で抗議をしている「辺野古に基地を絶対作らせない大阪行動」が実施した展示で、行動に参加しているおひとりがすべて手作りで(手芸で!)制作されたバナーやエプロンを展示していた。

写真でどこまで伝わるか自信がないけれども、とにかく一枚一枚がものすごく細かく、見えない裏側の部分にまで工夫が凝らされている。障害者施設で作ったさをり織を使ったり、知り合いの子どもが赤ちゃんだった時の着物を使っていたり。展示のタイトルは2秒視線を止めてもらっただけで意味の分かるバナーにしたいからということでしたが、じっくり見てもすばらしかった。

沖縄にルーツがあるわけではないけれども、本土の人間として基地の問題には責任があると感じ、15年以上も活動を続けているという話を聞きながらバナーをゆっくりみたのですが、感動で泣いてました。実際に抗議バナーの制作者の方もいらっしゃったのですが、まさか手芸で抗議のバナーを作る大先輩と旅行先で遭遇できるなんて!!!! 偶然すぎる。

いつか絶対東京でも展示をやりたいです。誰か手伝ってくれる人を募集中。

見学を終えて、時刻は21:30。こんなに遅くまでやっているドーンセンターありがとう。
大阪市内の宿に移動し、近くのチェーン中華料理店でごはんを食べ、一日目は終了。帰ってからホテルで海外にいるお友達に電話してしまい、早く寝ればいいものを早速夜更かししてしまう。
長くなりすぎたので続きます!!!!!

 

【訂正とお詫び】
『蟹工船』雑誌掲載に関する記述に誤りがありましたので、修正いたしました。お話を伺ったエルライブラリーにも深くお詫び申し上げます。(2022.8.17)

 

フェミニスト手芸グループ山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。