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「女の知恵は針の先」第20回:2022年の政治的な手芸部バナー展示を振り返ってみる(フェミニスト手芸グループ山姥)

2023/3/15

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ山姥。この連載は、彼女たちが毎日生活したり活動したり、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれの記録です。今回は、仙台と長崎で開催した「政治的な手芸部」のバナー展示について報告。それぞれの地域で展示を通じてフェミニストたちが繋がっていく様子に感激です。

 

2022年11月に仙台、2023年2月に長崎と2か所で政治的な手芸部のバナー展示を開催したので、その報告をかんなが書きます。

自分たちが東京に住んでいることもあってか、これまでの展示の機会はどうしても東京都内に限られていたところがあった。せっかく全国からバナー制作に参加してくれている方がいるのだし、他の場所でもできないかと考えて、無鉄砲にもいろんな人にお願いしてみたところ、仙台と長崎での展示が実現した。オンラインでの打ち合わせはしたものの、どちらも現地の方が広報や諸手続き、準備など展示にかかわるすべてを担ってくれたからこそ、開催までこぎつけられ、本当に人の縁に助けられるばかりだった。関わってくださったみなさま、ありがとうございました。

・仙台(2022年11月18日~20日仙台市男女共同参画推進センターエルパーク仙台、11月21日~29日曲線、11月23日~12月18日喫茶ホルン、11月24日~12月19日book cafe火星の庭)

仙台の展示は仙台で活動するshe-sow シーソーと一緒に実施した。
ここ何年か連続で政治的な手芸部に参加してくれている方がおり、なんとか展示の機会を持てないか前のめりでお願いしてみたところ、快く受け入れていただき、仙台市男女共同参画センター エルパーク仙台で開催する男女共同参画推進せんだいフォーラム2022に、she-sowと合同でブースを出させてもらうことになった。

おもしろそうなことには基本乗っかるので、山姥の2人もその日程に合わせて仙台へ行くことにした。せっかく行くのだから、バナーを見に来てくれた参加者の方も一緒に手芸ができるワークショップをやろう! となった。どんな形で実施するか、かなりギリギリまで迷っていたのだが、開始1週間前にその土地に関連したフェミニストの名前の縫い取りをすることに決まった。

人選はshe-sowのみなさんに丸投げしたのだが、只野真葛(ただの まくず)、アニー・サイレーナ・ブゼル、相馬黒光(そうま こっこう)、原阿佐緒(はら あさお)、山内みな(やまのうち みな)、郡山吉江(こおりやま よしえ)の6名を選んでくれた。当日は、she-sowが準備してくれた人物紹介や関連図書を読んでもらいながら、6人のフェミニストたちの名前(名字ではなく)を3日かけて縫い取った。実に様々な人が、すこしずつ手を貸して参加してくれて、布はどんどんにぎやかになった。わたしたちが帰ってきてからもワークショップを続けてくれているので、どのような完成となったのか、また仙台に伺って見られる日を楽しみにしている。

 

仙台市男女共同参画推進センターエルパーク仙台での展示風景。

フェミニストたちの名前の縫い取りワークショップ。ボタンやりぼんなどで装飾した。隣のブースで沿岸部の被災地の手芸サークルが出店していたのだが、ワークショップにも参加してくれ、自作の着物で作った紐を分けてくれた。それも一部に利用している。

・長崎(2023年2月4日~19日、ワークショップ2月5日 岡まさはる資料館3階ギャラリースペース)

以前からの福岡のお友達がR4LMという福岡で実施されている読書会に参加していたこともあり、当初は福岡の展示ができないか探っていた。福岡ではなかなかスペースが見つからなかったが、R4LMの方の紹介で、長崎にある岡まさはる資料館の3階をギャラリースペースにしているOMP+Asと縁ができ、一緒に展示を行った。

岡まさはる資料館は市民が作った、戦争加害について知る資料館なのだけれども、実は中学3年の修学旅行で行ったことがあったので、なんだか縁を感じた。展示を観ながら友達が座り込んで泣いていたのを覚えている。そういう歴史をきちんと教えようとする先生がいたというのは、大人になって考えてみるとかなり幸運なことだったのだと今更気が付く。

長崎にも山姥二人で行ってみることになり、仙台と同じくフェミニストたちの名前のワークショップもやることになった。長崎の人選は長崎女性史研究会の国武さんが手伝ってくれ、神近市子(かみちか いちこ)、小林ヒロ(こばやし ひろ)、福田須磨子(ふくだ すまこ)、ばってん・うーまんの会を選んだ。

仙台の時とは異なり、1日のみのワークショップだったので完成するのか心配だったが、福岡からR4LMやフェミハウスのみなさん、政治的な手芸部の参加者も来てくださり、無事できあがった。

岡まさはる資料館3階ギャラリースペースでの展示風景。左端のディスプレイではこれまでバナーを持って行ったデモや抗議の写真などをスライドショーにまとめて流してもらっていた。

長崎でのフェミニストたちの名前の縫い取りワークショップの様子。仙台でボタンなどわけてもらい、こちらでも使わせてもらった。ここでもボタンなど持ってきてくれる人がいてありがたくいただき、次の展示につなげていきたいと思っている。

完成したフェミニストたちの名前の縫い取り。左上から時計回りに神近市子、小林ヒロ、福田須磨子、ばってんうーまんの会となっている。
すごいうれしかったので自慢してしまうんだけれど、わたしがいちばん大好きな福岡アジア美術館に今回の展示のチラシがささっていて、感動して色んなアングルから写真を撮ってしまった。

手芸の上手い人、苦手な人、好きな人、やったことない人も混じり合い、フェミニストたちの名前を装飾し、縫い付ける。もう今後は、展示の時にはこのワークショップをセットでやって、いつか47都道府県揃えたいと思った。まだ東京でやってないけど。

今年の「生存」バナーも縫い合わせが無事終了。お天気が良ければ、3月8日のウイメンズマーチ初お目見え予定! 今年2023年も展示ができないか、模索しています。お金はないのですが、一緒に作り上げてくださる方がいれば、ぜひご連絡ください。

 

フェミニスト手芸グループ山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。