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「女の知恵は針の先」第13回:父の日と私(フェミニスト手芸グループ山姥) | book | エトセトラブックス / フェミニズムにかかわる様々な本を届ける出版社

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「女の知恵は針の先」第13回:父の日と私(フェミニスト手芸グループ山姥)

2022/7/15

 

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ山姥。この連載は、彼女たちが毎日生活したり活動したり、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれの記録です。今回は、「父の日」にちなんで、考えるとちょっとしんどいけど、ふと思い出すこともある「父」のこと。
 

今回の担当はマルリナです。もう一ヶ月前になるけど、今年の父の日は、6月19日でした(いつもは無視しているけど)。その頃に考えたことについて書いてみます。

これまでの人生であまり父の日を意識したことはない。私が高校生の時に両親が離婚したのでそれ以降は完全に父と別々に住んでいて、今ではどこにいるのか知らないし(日本にいないという風のうわさもある)、離婚前もあまり家で過ごしていなかった気がするので我が家では「父の日」という日が意識されなかった。何かを買ってプレゼントしようと思ったことなどないし、家族で何かイベント的なことをしたこともない。

それでも、父の日が近づくと、多くの店が突然父の日とコラボしだして、お父さんにこれをプレゼントしましょうとポスターなどを貼りだすので、少し意識してしまう。

詳しいことは忘れてしまったが、父が生まれた家では3人きょうだいの中で男子が一人だけで、それが父だった。「勉強だけしていればいい」と言われて育ったらしく、たぶん本当に勉強だけしてきた。私が子どものころ、父はフルタイムの会社員をしていて、仕事か接待か、ただの遊びなのかわからないけど、ほとんど家にいなくて、私が知る限り育児という育児はほぼしていなかった。ときどき、突然土日にそうめんを作ったりはしていた(年に3回くらい)。

ほとんど家にいないので、自分の友達が遊びに来るときは、家のぐちゃぐちゃしたものを
紙袋にぶちこんで父の部屋にとりあえず押し込んだりした。それを片付けるのを忘れると、ある日突然酔っぱらって帰ってきた父がブチ切れて投げてきた。今でもときどき悪夢を見る。正直、今さらどうでもいいこととしてしまいたいけど、夢で見るくらいだから完全には忘れてはいないんだろう。

二十歳くらいのときに一度新宿高島屋のつばめグリルで戦時性暴力の話になって(私がwamに行った話をしたからか⋯…)日本の戦時加害について話していたら大げんかになった。父は「”慰安婦”のことを英語で書ける日本人がいないから、真実が伝わってないんだ。だから、俺はアメリカの雑誌に英語で論文を投稿した」と言っていた。父にとっての真実というのは右派が主張していることだ。

映画『主戦場』が劇場公開されたときすぐに観に行った。右派の論客や活動家のインタビューが続いていくなかで、父が出てこないかヒヤヒヤしながら観て、最後まで一応父が出てこなかったので正直ほっとした。私にとって、右派の論客はそれくらい身近で、全然遠い存在の人ではない。なので、ドキュメンタリー映画やニュース映像などで右派の論客がトンデモな主張をしているのを見ても「右派の論客やばい」などと切り離してみることなどできなくて、ちょっとしんどいけどもそれが現実だ。

父の日が近づくといつもふとそんなことを思い出す。それでも、一応一緒に暮らしたこともあるし、そうめんを作ってくれたこともあるし(ほんの数回)、アンビバレントな気持ちは否めない。なんとも整理のつかない気持ちを抱きながら、父の日のポスターを眺めている。

そうめん(に見えないけど)の刺繍

 

フェミニスト手芸グループ山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。

 

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