「女の知恵は針の先」第8回:駅まで走りきる体力

2021/12/14

 

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ「山姥」。この連載は、彼女たちが日々の活動や、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれの記録です。第8回は、『エトセトラVOL.6』を読んで思い出した、あの頃の、身体とうまく付き合えなかった自分について。

 

2か月に一度回ってくる連載の自分(マルリナ)の番。ここ2か月で何かあっただろうかと振り返ってみると、突然ズンバとカポエィラを習い始めた自分がいた。

ちょうど『エトセトラVOL.6 特集:スポーツとジェンダー』(井谷聡子責任編集)が発売されて読んでいたら、自分が自分の身体と全然うまく付き合えなかった高校時代を思い出した。

今思うと突拍子もないが、高校1年生の時に先輩たちと東南アジアに2週間ほど旅行をしたことがあった。なにせ高校生で本当にお金のない中で行ったので、めちゃくちゃ喧嘩して、最後の2日しか旅行らしいことができなかった。もったいない! わたしは現地の食事が合わなくて旅行中フライドポテトしか食べなかった。そしたら、当然ながら体重が増えた。今思うと、体重が増えたといっても、BMIは基準値内だし、全然気にすることもないのだが、「なんか、太った?」の一言で体重が気になるようになってしまった。

今なら、キレ返すこともできるかもしれないが若かったので真に受けるしかなかった。それで当時流行していた置き換えゼリーダイエットというのを始めた。夕飯をゼリー飲料に置き換えるダイエット方法で、単純に夕飯のカロリー摂取を抑えられるので痩せますよということだった。食事のほかには、透明のビニール傘をさして半身浴をしたり(浴室でビニ傘をさすのは汗をより出すため)、地域のトレーニングジム(1回400円)に行ってランニングマシーンで走ったりエアロビクスのクラスに出たりしていた。高校生で代謝が良かったのでみるみるうちに痩せた。毎日体重計に乗って、減っていく数字を見ながらものすごい高揚を感じていた。ティーン雑誌でモデルが着ているような服も入るようになった。この前、部屋を片づけたときに当時の食事日記が出てきたのだけれど、全然食べていなかった。そして、生理は止まった。たぶん半年くらい止まっていたと思う。(そのせいで今や骨密度がとても低くて、骨粗しょう症の予備軍という現実にぶち当たっている)

そのあとは、お決まりのリバウンド。過食症になった。食べ始めたら生理は再開したけど、うつになった。病院にも行った。今検索すると未成年には出さないと書かれている薬を出された。わたしの場合、ものすごく食べても吐いたりすることができなくて、下剤を飲みまくった。だから、いつ下痢が始まるかわからないので長い時間外出ができなかった。バスや電車に乗っても1駅、2駅で下車してトイレに駆け込まなければならなかった。毎朝決まった時間に学校へ行くこともむずかしくなった。年度末には見事、遅刻指導の対象となり、罰として机・椅子運びをやらされたのだが、そのおかげで新しい友達ができたのはいい思い出。何がきっかけだったのかいまだにわからないけど、文化祭準備で忙しくしていたら、いつの間にか下剤を飲みまくる日々が終わっていた。

先日、親知らずを抜歯したら傷口が痛すぎて、固形の食事がしばらく取れなくなった。数日はゼリー飲料しか飲めなかったのだが、置き換えゼリーダイエットの時によく飲んでいた青色と緑色のパッケージのゼリー飲料は怖くて買えなかった! 黄色や紫色のゼリー飲料にお世話になった。いま体重が増えるのは構わないが、体重が減ることは怖い。高校生の時に経験したことが結構トラウマになっているからだ。今も将来骨粗しょう症になるかもしれない、とか無排卵月経かもしれないという恐怖を感じているのだけど、そもそも常に“健康”でいられること自体が幻想だと思う。(まず“健康”という概念に懐疑的になるべきだけど。)健康と自己責任論は、常に隣り合わせで、わたしも内面化しているところがあるのだけれど、“健康”をコントロールすることなんてできないはずだし、わたしが高校生の時にあんなことになったのは自分が“無知”で“浅はか”だったからではないだろう。

今でも全然自分の身体とうまく付き合えていないけど、20年前にやめたバレエを再開してそれなりに楽しんでいるし、友達に誘われてズンバに行き始めたし、通りすがりに見つけたカポエィラ教室の体験に行ったらすっかりハマった。その結果、駅まで走り切る体力がついてきた。遅刻魔のわたしにとって、ありがたい話だ。体を動かすことは嫌いじゃない。わたしはいつも極端な人間でなぜか急に習い事を増やしている。気力もお金(切実!!!)もいつまでもつのか謎だが、とりあえずは楽しんでいる。

 

カポエィラはブラジルに連れてこられた奴隷たちによる抵抗の格闘技から生まれたスポーツだそうです。ブラジルのフェミTを着て練習に行っています。(ポルトガル語で「わたしたちはあんたたちが燃やせなかった魔女の孫だ」)

 

山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。