第5回:自分ひとりの部屋

2021/9/13

“政治的な”制作活動をしているフェミニスト手芸グループ「山姥」。彼女たちが日々の活動や、編んだり縫ったりしながら考えたあれこれを記録する第5回は、最近、一人暮らしをはじめて知ったこと、考えたこと。ウルフの時代から100年後、果たして女は本当に「自分ひとりの部屋」を持てるようになったのだろうか。

 

引っ越しして、一人暮らしを始めたかんなです。

30代になって、はじめての一人暮らしである。もろもろの事情が重なって、実家を出ることになったのだが、今まで引っ越しもしたことがなかったので、こんなに大変だとは思ってなかった。平気な顔してこんなことこなしてるみんな、えらい。えらすぎる。

まず、家探し。うっすらわかってはいたけど、都内は家賃が高い。月々の家賃の目安は収入の3分の1くらいまでなんていう話があるが、3分の1が固定費として消えてしまうって、結構な割合である。街中をうろうろする時、テレビでドラマやCMを見る時、この家は賃貸なのか分譲なのか、家賃はいくらくらいなんだろう……と金の亡者のように考えるようになってしまった。

インターネットの物件サイトで、2階以上、オートロック、室内インターホンと、防犯面を考慮しての条件を加えていくと、サイト内にたくさんあったはずの物件はあっという間に少なくなってしまう。そして家賃は上がり、部屋は狭くなる。安全(らしきもの)をお金で買う時の、そのコストの高さよ。

やっとこさ、インターネットでめぼしい物件を何件か見つけて、不動産屋に問い合わせ、いざ内見となった段階で、親が自分も一緒に行くと言い出した。はじめのうちは「え~こんな歳にもなって内見に親を連れていくのか……」と思ったのだけど、みんなはどうしてるのかなとtwitterでアンケートを取ってみたら、誰かに同行してもらったという人の方が多かった。

一人で行った場合でも、ドアは開け放しておいたとか、車で男性の不動産屋と二人きりになるのが不安だったと教えてもらった。そこからか~~~っていうのがすっかり抜けていた。油断していた。

たしかに見に行った先の部屋や移動中の車内で密室になるからか、検索してみると実際に性暴力の被害にあった人や嫌な思いをした人もたくさんいるみたいだった。

内見すら、安全に行けない。常に警戒していないといけない。変な社会だ。結局親についてきてもらった。こうやって書くと男性がみんなそんな人間というわけじゃないと言ってくる人がいてそれはそうなんだけど、犯罪者が犯罪者と首から書いて下げてるわけじゃないんだから、全員に対して警戒せざるをえないのも当たり前じゃんって思う。

そのやるせない、けど緊張して息の詰まるこの警戒が、自分自身でも本当に嫌なんですよ、わかります?っていう。

これでいいのかよくないのか、最後まではっきりした確信は得られなかったが、とりあえず条件面は良かった部屋の契約まで至った。でも、その契約にあたって、保証会社を使うのに、さらに保証人(父親)の確認の書類が必要と言われた。

払うのはわたしで、これから保証会社にも毎月お金を払う予定で、どうしてさらになぜ保証人が必要なんだろう。ただの契約上のことで、大家さんの安心のためで、自分以外もそうしているとわかってはいつつ、色濃く家父長制の気配を感じて、なんだかものすごく嫌だった。

暮らし始めてみても、2階なので、昼間でも窓を開けるのにびくびくしてるし、カーテンは外が見えづらい遮像カーテン(Twitterで遮光カーテンじゃないと人影が見えて一人暮らしだとばれてしまうから、カーテンはケチってはいけないというツイートを見て不安になってる。一人暮らしってバレたらダメなの?無理過ぎない?)だし、洗濯物は外に干してない。宅配で荷物が来てドアを開けるのにも躊躇する。そんなことまでしなくても大丈夫なのかもしれないけど、うっすら不安でそうしてしまう。

そんなこと忘れている時間ももちろんあるけど、ふとした時にものすごく心配になる。

自分ひとりの部屋、安心して何の心配もなく暮らせる部屋、そしてそれをまかなえる自分の収入。2021年の日本でもなおとても難しい。

ヴァージニア・ウルフ、わたし、「自分ひとりの部屋」について話したいこといっぱいあるよ。

 

山姥(やまんば)
2019年からマルリナ・かんなの2人で、フェミニズムや自分たちの好きな本、漫画をテーマにした手芸(刺繍や編み物)をして活動中。山姥は俗世間に馴染めず、おそろしい存在として排除されてきました。しかし、実は彼女たちは歴史や制度、そして男たちの期待する女の姿に押し込められず、闘ってきた女たちではないでしょうか。そうした先人たちの抗い方を見習いたい、そんな思いで活動しています。