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韓国発ジェンダー絵本『女の子だから、男の子だからをなくす本』より、すんみ「訳者あとがき」を公開します | book | エトセトラブックス / フェミニズムにかかわる様々な本を届ける出版社

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韓国発ジェンダー絵本『女の子だから、男の子だからをなくす本』より、すんみ「訳者あとがき」を公開します

2021/3/11

2021年3月28日発売に先駆け、韓国のジェンダー絵本『女の子だから、男の子だからをなくす本』(すんみ訳)の訳者あとがきを公開します。先日の森発言を例にとるまでもなく、「女だから」「男だから」という性差による差別が空気のようにはびこっているこの社会。大人を縛り、苦しめるジェンダーによる先入観は、社会にとってなにより大切な子どもの自由を制限しています。韓国から届いたこの絵本は、「ステキな大人」になるにはどうしたらいいのか、子どもに正しいジェンダーの知識を教えてくれます。子どもにももちろん読んで欲しいけど、大人にこそ読んで欲しい本。まずは、すんみさんによるあとがきをどうぞ読んでみてください。

 

 

 

 

 

訳者あとがき

子どもは自由で、無限の可能性を持っているといわれますが、実はいろいろなことを我慢しています。私も子どものとき、やりたいことがたくさんあるのに、やらせてもらえないことがしばしばありました。

わたしが不自由を感じていたのは「女の子だ から」という理由でやらされることでした。どこかでじっとして遊ぶよりは、走り回って、冒険をするのが大好きだったのに、「女の子だからスカートをはかなきゃいけない」「女の子だから合気道ではなく絵の習い事に行かなきゃいけない」。

私は、スカートをはくのも、お絵描きもいやでした。一方で、部屋で本を読むのが好きで、書道が上手で、繊細な性格だった兄は、「男の子だから」という理由で合気道に通わされていました。そんな兄がうらやましくてしかたありませんでしたが、いま考えると、兄は家で好きなだけ本が読みたかったのだろうと思います。こうした「女だから」「男だから」というおとなの先入観は、子どもの自由を制限してしまいます。

でも、さいわいなことに、韓国ではこうした固定的な考えに反対する声が広がっています。2015 年から新しいフェミニズ ム運動が急速な盛り上がりを見せ、性別を 理由に自由を制限されないよう社会を変えていこうとする声がたくさん集まり、社会 現象になりました。大多数の人が公平、多様性が大事だとわかっていても、現実社会ではなかなか性別による差別が消えないことに痺れを切らし、ソウルのあちこちで大 規模なデモが開かれました。男性中心の家 族制度を批判し、新しい家族のあり方を模索する動きもあります。そして、格差や貧困の問題、性的マイノリティなどの抑圧さ れ不利益を被っているあらゆる人々のため に、社会構造を変えていこうという動きが高まっています。

本書はこうした流れの中で生まれた本です。原題『女の子と男の子:ステキな人になる方法』という、子どもたちに必要な知 識を身につけてもらうための「自信満々生活本」シリーズの一冊です。世の中を性別でわけて考えることから子どもたちの自由 を守るために出版されました。ジェンダーにとらわれない考え方は、これからの社会 を生きる上で絶対必要な知識というわけです。

 

ちなみに本書の監修者が代表を務めている「初等性平等研究会」は 2016 年に作られた団体で、2017 年にある小学校教員が授業中にソウルクィア文化祭の写真を見せたことに対して批判が寄せられたため、 オンラインで「#私たちにはフェミニスト 先生が必要です」というハッシュタグ運動 を行ったことで話題となり、2018 年には第七回イ・ドンミョン人権賞を受賞してい ます。

著者はいま私たちが日々の暮らしの中で 目の当たりにするジェンダー規範、つまり男女二元論、異性愛主義に基づいた社会を批判しています。そういった既存の社会の価値観にとらわれたおとなたちは、悪気もなく「女の子だから」「男の子だから」「子どもだから」と決めつけて、子どもの行動 や思考を制限してしまいがちです。本書 は、ふだん男の子にかけられる制限の言葉を女の子に、女の子にかけられる制限の言 葉を男の子にかけるミラーリング手法を取り、そういう言葉が子どもたちをいかに不 自由にさせているかを示してくれます。これまでのジェンダー規範にとらわれた考え方がいかにおかしかったか気づかせてくれます。また、子どもたちにそんな言葉は聞 かなくていい、おとながまちがっていたらおとなを変えよう、と語りかけます。私たちおとなも、無意識のうちに子どもたちの 可能性や未来を制限してしまわないように 気をつけなくてはいけないと、考えさせら れます。本書を読んでいるうちに、既存の性別の枠組みから徐々に解放されるはずです。この本が、子どもたちが新しい一歩を踏み出すきっかけになってほしい。

男性中心主義社会や格差社会、人種差別など、そういった問題のまちがいに気づいた人が一人でも多く社会を変えようとすること。そして、これからの社会を担っていく子どもたちに、正しい認識を持ってもらうこと。そのようにして、世の中は少しずつ変わっていきます。少しずつですが、確 実に変わっていくはずです。本書は、そうした思いを、多くの人たちに届けたいと 願って書かれたものです。ぜひ、お子さんと一緒に読んでみてください。

2021年2月