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2024/11/14
「フェミ登山部」とは、主に関西近郊の山を巡ったり、ときどき遠くの山に登ったりもする、トランスやクィア、シスとヘテロも参加する多様なフェミニストたちのコレクティブ。メンバーたちが山を登りながら、ときに下りたあと考えたあれこれを、リレー形式で連載します。第16回は、望さんが、フェミ登山部で確信した自分の「道」の歩き方について語ってくれました。
中3の時に将来の自分に宛てて書いた作文によると、私はこんな人生を歩むつもりだったようだ。
・地方の高校から、東京の私大に進学→卒業
・出版社に就職し、ファッション雑誌の編集を担当
・東証一部上場企業勤め(!)の人と結婚
・その相手との子どもを一人産み、育てる
大企業で正社員として働いて、結婚して、血縁のある子どもを産み育てて…。
思い描いていた「正しい幸せ」は、東京の私大を卒業、までしか当たっていない。そして、今後の仕事のことは分からないが、結婚はないし、出産や子育てもきっとない。
「結婚適齢期」というやつに突入しているようで、ここ一年、友人から続々と結婚報告が届いている。
私は(主に)戸籍制度反対の思いから、日本の婚姻制度が包含する範囲が広がっても、結婚しないと決めている。それは私にとっての幸せにおいて、決して譲れない部分だ。(今ある婚姻の不平等をまず是正すべきと考えているので、選択的夫婦別姓や婚姻の平等は「議論」ばかりしていないで実現すべきだと思います)
あの頃信じて疑わなかった世間一般の「正しい幸せ」は、私にとっての幸せではない。どうやら私は、そこに至る「レール」から外れてしか生きられないっぽい。
でも、同世代の友人たちが着実に「正しい幸せ」に則って進んで(?)いくのを見ると、漠然とした不安も時々抱いてしまう。「レール」に乗らないことを選んでいるのは自分なのだけれど、それでも、このまま道を進んで自分は一体どうなるのだろうと。
フェミ登山部の仲間と共にする時間は、私にとってとても貴重だ。こんな道もあるよ!と示してくれる人、「レール」に乗るかどうか選べる時点で特権的であることを気づかせてくれる人、一緒に美味しいものを囲んで、また一歩進むための元気をくれる人。
初めてハイクに参加してすぐに関西を離れてしまい、空間を共にすることはなかなかできていなかった。けれどようやく先日、2回目に参加できた。かつてJR福知山線のレールが敷かれていた廃線敷を、みんなで歩いた。
ずっとこの時間が続けばいいのに!と思うくらい居心地よく過ごせたのは、みんなバラバラであることが前提になっているからだと思う。
参加頻度や登山歴、運動習慣などもバラバラだし、そりゃそうだけど、あらゆることがバラバラ。
さあ、あなたらしく!と求められて、あえて「自分らしく振る舞う」必要もない。そのことに罪悪感めいたものも感じなくていい。
バラバラであることが前提として共有されている場は、なかなか手に入れ難いものだ。
私は私なりの道を進もう、と元気をもらって2回目のハイクを終えた。また立ち尽くしたり迷ったりしたら、いや、しなくても、フェミ登山部の仲間に会いに山に行きたいな。
廃線敷コースを進んだ先にある「武田尾温泉 歓迎」と書かれたゲート。ちょっとレトロでかわいい。
廃線敷コースの途中にあった橋。
フェミ登山部(ふぇみとざんぶ)
2022年春から活動を始めた、月1ペースで主に関西近郊の山を巡る(時々遠出もする)、トランスやクィア、シスとヘテロも参加する多様なフェミニストたちのコレクティブ。トランス差別をはじめとしたあらゆる差別に反対し、自身の特権性に向き合いながら学ぶ姿勢を持つ20代から70代までの幅広い年齢、そして様々な経験を持つフェミニストたちが参加している。
望(のぞみ)
「大企業」からNGOに転職して1年目で、いろいろと奮闘中。独立系書店に行くことや、フェミニズムの本を読むことが好き。
「あの日、山で見た景色」フェミ登山部