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【イベントレポート】「フェミの主戦場」『エトセトラ』創刊記念 田房永子✕エトセトラブックス トークイベント①(本屋B&B)

2019/6/6

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5月22日下北沢B&Bにて、雑誌『エトセトラ』創刊記念トークイベントが行われました。責任編集の田房永子さんと、エトセトラブックス代表の松尾亜紀子がお話し、「コンビニからエロ本がなくなる日」特集号ができるまでのいきさつや、裏話、コンビニのエロ本に対する思いなど、ふたりの怒りと喜びが爆発! あっという間の2時間の一部を、2回にわけてレポートします。
(構成:「エトセトラ」編集部・竹花帯子)

 

「コンビニからエロ本がなくなる日」を特集したわけ

松尾 まずはなぜこのテーマで特集することになったのか、田房さんからお話しいただきます。

田房 私は2010年ごろからフェミ的なコラムを書き始めたんですけど、ネットでフェミ的な発言すると、ドメンズ(怒男)たちにぶっ叩かれるようになって。

松尾 怒メンズ?

田房 現実の性別はわからないけど、ネット上で怒ってる男性のことです。もう殺し合いみたいになって。

松尾 ああ、ツイッターの中で。

田房 そうそう。実際に戦ってるわけじゃないですよ(笑)。お互い血まみれで向こうも傷ついてるのがわかるし、このやり方はよくないなって思いはじめて。だから「コンビニからエロ本がなくなる」っていうニュース聞いたとき「これだ!」って思ったんです。布団の上で「ウオーッ!」て叫んだもん。

松尾 「これだ!」っていうのは?

田房 これまで女性が自分たちの尊厳を訴えてきた中で、喜びを表現する機会ってなかったじゃないですか。

松尾 ありませんでしたよね。

田房 フェミニストは、常に、世の中の性差別を指摘してて、いつも怒ってますよね。

松尾 うん、別に怒りたくないのに、必然的に怒ってます。

田房 そう、だから、コンビニからエロ本がなくなることに対しては「めちゃくちゃうれしいぜ!」って喜びをね、世の中に発信しようと思ったんです。喜びを伝えることで、逆説的に「今までつらい思いをしてたんだ」ってわかってほしいから。だからその喜びを最大限に表現しなくちゃって。

松尾 なるほど。

田房 「コンビニエロ本がなくなって嬉しい!!」って喜んでる人の姿は、見てる人にもダメージがないと思うんですよ。実際には、「コンビニエロ本いやだーーー!!」って目を釣り上げて怒ってるのと意味は同じなわけですよね。意味は同じなのに、違う動作でそれが伝えられる、ってこんなチャンス1000年に一度くらいのことだと思うんだよ!

松尾 うんうん。

田房 それでまずパレードをやりたいって思ったんですね。首都圏のコンビニをまわって「ありがとうございますっ!」って感謝の行脚をしようって。令和元年8月31日にみんなで集まって(*編集部注:大手コンビニチェーンが2019年8月末までに店頭での成人向け雑誌の販売中止を発表した)「ほんとうに今までつらかった。でも明日からは大丈夫!」「マジでコンビニありがとう!」ってアピールして、ニュースZEROとかニュース23に映りたいんですよ。

松尾 コンビニからエロ本がなくなって嬉しいフェミが、パレードでお茶の間に登場する!

田房 そう、ニュースで流れたら、今まで私たちがどれだけイヤな思いをしていたか可視化できるじゃないですか。で、そのときに配る冊子がいると思ったんです。それがこの本のはじまりでした。

松尾 そう、それでね、田房さんからその冊子を編集してくれないかってお話を伺ったとき、私は私でエトセトラブックスから出すフェミマガジンの構想があったんですね。創刊号は「フェミニズムってなんだろう」という入門的なものにするかな、ってぼんやり考えていたんですが、田房さんの話を聞いて、これは今しかできない、これを創刊号にしてもらおうと。

コンビニの「エロ本」とはどういうものだったか

松尾 コンビニにエロ本があることが気になり出したのはいつですか?

田房 子どもが4歳ぐらいから本格的にマズいなって。上の子が女の子なんですけど「これなあに?」って気にするんです。

松尾 (スクリーンに)ちょっと実際のコンビニの写真を映しますね。

田房 あ、これは私が見た中で、いちばん過激な店舗ですね。子どもも通る場所に「ナマ出し」とか「未熟オマ◯コ純潔崩壊!」とか見出しが踊っている。この雑誌は、床から10センチくらいのところに無造作に置かれてて、裏表紙には、下半身は何も身につけてない制服服姿の女の子が股を広げてる写真が載ってた。局部が塗りつぶしてあるだけ。

松尾 紙面ではモノクロでしか載せてませんから、改めてカラーで見ると凄まじいですね。

田房 うん、これは、「エトセトラ」を作ってるときにわかったんですけど、たぶん、みんな、あんまり実際にコンビニでこの売場を直視してないんですよね。

松尾 目をそらしてたって言う人も多いですね。

田房 男性も買わない人は見てないし、だから話が通じないんです。「コンビニのエロ本のなにが問題なの?」って人に、「とりあえず見てみ」って言うと、「見てきた。ヤバかった」ってなる。あ、この写真のコンビニは、JK祭りみたいな棚。これ、レジ前なんです。しかも隣に高校がある。

松尾 流通の仕組みを調べてみると、各コンビニにどういう商品を置くかは、基本的には、それぞれの店長に任されている。つまりこのケースは、高校が隣にあるコンビニの店長が、あえて女子高生もののエロ本を選んで、注文して、並べてたってことなんですよ。

田房 すごいよね、すごいことだよ。

松尾 この写真は3ヶ月前だから、最近はどうなってるか見てみましょう。

田房 これは、かつて成人誌が置かれてた場所に幼児向け雑誌が置かれてます。成人誌じゃなくても売れるんですよ、って店長にアピールするために、私はここで『げんき』と『めばえ』を買いました。

松尾 それ、めちゃくちゃ大事なアピールですね。
(続く)