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エトセトラブックスの本
小山さんノートワークショップ 編
定価
2400円+税
判型
四六判変形・並製
頁数
288ページ
装丁
鈴木千佳子
装画
いちむらみさこ
発売
2023年10月30日
刷り
4刷
ISBN 978-4-909910-19-6
「小山さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺したノート。
時間の許される限り、私は私自身でありたいーー2013年に亡くなるまで、公園で暮らしながら、膨大な文章を書きつづっていた小山さん。町を歩いて出会う物たち、喫茶でノートを広げ書く時間、そして、頭のなかの思考や空想。満足していたわけではなくても、小山さんは生きるためにここにいた。
80冊を超えるノートからの抜粋とともに、手書きのノートを8年かけて「文字起こし」したワークショップメンバーによるそれぞれのエッセイも収録。
「はじめに――小山さんノートとワークショップ」(登久希子)をこちらで全文読めます。
お取り扱い書店は▶こちらから
編者の意向により、本書3刷以降の印税相当額はすべて寄付金に充てます。プライバシー・安全を考慮し寄付先は非公開といたしますが、読者の皆さまにご理解いただけると幸いです。(2024年2月7日/編集部)
【メディア掲載・紹介】
2023年11月25日「毎日新聞」今週の本棚・話題の本(評者:花田菜々子氏)
11月25日「沖縄タイムス」他、記者のしおり(共同通信配信)
12月2日「しんぶん赤旗」図書室
12月7日「VERY」1月号「柚木麻子さん、今年の気分を表す一冊って何ですか?」(評者:柚木麻子氏)
12月11日「AERA」2023年12月18日号「アエラ読書部」(評者:伊藤亜和氏)
12月13日「東京新聞」書き記した「生」 貫いた自尊心 ホームレス女性「小山さん」残されたノート、有志が書籍化
12月14日「社会新報」書評(評者:栗田隆子氏)
12月14日「週刊文春」12月21日号「私の読書日記」(酒井順子氏)
12月17日「NHKラジオ深夜便」ないとガイド「本の国から」(出演:辻山良雄氏)
12月22日「下野新聞」雷鳴抄:奇跡のような道筋
12月23日「図書新聞」第3620号2023年下半期読書アンケートで、岩川ありさ氏が紹介してくださいました。
2024年1月13日「信濃毎日新聞」書評(評者:伊藤春奈氏)
1月20日「朝日新聞」書評(評者:山内マリコ氏)
1月20日「西日本新聞」書評(評者:和泉僚子氏)
1月22日Audible限定podcast「アトロク・ブック・クラブ」で、斎藤真理子さんが取り上げてくださいました。
2月13日「エコノミスト」2024/2/13号書評(評者:後藤康雄氏)
2月17日「東洋経済」2024/1/24号「今週のもう1冊」(評者:牟田都子氏)
ほか
【小山さんのノートより】
働きに行きたくない。仕事がかみあわない。もう誰にも言えない。私は私なりに精いっぱい生きた。(…)私にとって、大事なものは皆、無価値になって押し流されていく。(1991年11月7日)
雨がやんでいたのに、またふってくる。もどろうか。もどるまい。黄色のカサが一本、公園のごみ捨て場に置いてあった。ぬれずにすんだ。ありがとう。今日の光のようだ。(2001年3月18日)
駅近くに、百円ちょうど落ちていた。うれしい。内面で叫ぶ。八十円のコーヒーで二、三時間の夜の時間を保つことができる。ありがとう。イスにすわっていると、痛みがない。ノート、音楽と共にやりきれない淋しさを忘れている。(2001年5月7〜8日)
五月二十日、夜九時過ぎ、つかれを回復して夜の森にもどる。 にぎやかな音楽に包まれ、心ゆったりと軽い食事をする。タコ、つけもの、紅のカブ、ビスケット、サラミ少々つまみながら、にぎやかな踊りをながめ、今日も終わる。夜空輝く星を見つめ、新たな意識回復に、十時過ぎまで自由な時間に遊ぶ。合計五百十六円拾う。(2001年5月20日)
ほっと一人ゆったりと歩く。のどがかわいた。水かコーヒーを飲みたい。こんな活気のない金曜の夜、三百円もち、何も買えない。人間の人生は生きてる方が不思議なくらいだ。(2001年6月22日)
一体、五十にもなって何をしているんだと、いい年をしてまだ本をもち、売れもしないもの書いて喫茶に通っているのか……と、怒り声が聞こえそうな時、私の体験の上、選んだ生き方だと、私の何ものかが怒る。(2001年6月14日)
私、今日フランスに行ってくるわ。夜の時間をゆっくり使いたいの……。美しい夕陽を見送り、顔が今日の夕陽のように赤く燃えている。(2001年6月27日)
2階カウンターの席にすわり、ノートと向かいあう。まるで飛行機に乗ったような空間。まだ3時過ぎだ。流れるメロディーに支えられ、フランスにいるような気持ちに意識を切り替える。(2002年2月21日)
一時間、何もかも忘れのびのびと終わるまで踊ることができた。明るいライトに照らされた足元に、一本のビンがあった。冷たい酒が二合ばかり入っている。大事にかかえ、夜、野菜と共に夜明けまでゆっくりと飲み、食べる。(2002年9月28日)
五時過ぎ、十八時間の飛行機に乗ったつもりで意識は日本を離れる。外出をやめ、強い風が吹き始めた天空、ゆらゆらゆれる大地、ビニールの音。 (2003年9月7〜9日)
「はじめに――小山さんノートとワークショップ」登 久希子
「小山さんが生きようとしたこと」いちむらみさこ
小山さんノート
序 章 1991年1月5日〜2001年1月31日
第1章 2001年2月2日〜4月28日
第2章 2001年5月7日〜8月21日
第3章 2001年8月22日〜2002年1月30日
第4章 「不思議なノート」 2002年9月3日〜10月4日
第5章 2002年10月30日〜2003年3月16日
第6章 2003年7月3日〜2004年10月12日
小山さんノートワークショップエッセイ
「小山さんとノートを通じて出会い直す」吉田亜矢子
「決して自分を明け渡さない小山さん」さこうまさこ
「『ルーラ』と踊ること」花崎 攝
「小山さんの手書きの文字」藤本なほ子
「沈黙しているとみなされる者たちの世界」申 知瑛