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エトセトラブックスの本

私の愛するロシア

私の愛するロシア

プーチン政権から忘れ去られた人びと

エレーナ・コスチュチェンコ
高柳聡子 訳

定価

3000円+税

判型

四六変・並製

頁数

496ページ

装丁

福岡南央子(woolen)

発売

2025年11月17日

原題

Моя любимая страна

ISBN

978-4-909910-33-2

内容

沈黙を拒むジャーナリズム、私たちが本当に知るべきロシアの姿。

 

「エレーナの言う『国を愛する』は、従順や沈黙ではない。誰かを周縁に追いやることでもない。ファシズムと戦争がこの世界を飲み込んでしまう、その前に、彼女の警鐘がこの本を通して、日本社会にも響くように」
--安田菜津紀(Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)

 

「プーチンはどこから来たのか? ロシア人とはどのような人びとか? 知りたければこの本を読みなさい」
--スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(『戦争は女の顔をしていない』著者、ノーベル文学賞作家)

 

プーチン政権批判の最先鋒「ノーヴァヤ・ガゼータ」紙に17年間つとめたジャーナリストによる、渾身のルポルタージュ。戦争にひた走るロシアにおいて、モスクワから遠く離れた地方の自動車道で〈身を売る〉女性たち、廃墟で暮らす未成年の子どもたち、国営の障害者施設、忘れられた公害、隠蔽された学校占拠事件、迫害される少数民族、性的少数者……政権下において周縁に追われ隠されてきた人びとの声を伝える記事と、真実を語る記者としてそしてLGBT活動家として戦ってきた自らの半生を交互に綴る。2024年プーシキンハウス図書賞受賞。

 

「私は、自分の母国への愛についての本を書いた。常に良い方向に、というわけではないにしても──この国が、その生においてどう変わっていくのか、この国が私たちをどう変えるのかを。ファシズムは何から生じるのか、どんなふうに育ち、開花するのか。本書に頻繁に登場する私の母もまた、私の母国だ。そして私自身も本書に登場する。私はもう、自分のルポルタージュの主人公たちの陰に隠れたりはしない」(本文より)

 

「政治の不手際が、中央からは死角となっている市井の人びとの生活の細部に綻びをもたらすこと、数年後に戦争を始める国で起きていたことが垣間見える気もする。大きな政治や大きな経済や軍の話をせずとも、私たちの生活がそれまでのように立ち行かなくなるとき、必要なものが手に入らなくなるとき、人間が粗野に扱われるようになるとき、私たちはその原因の責任の所在を明確にすべきなのだとあらためて教えられた思いだ。これは、今の日本に生きる私たちにとってもまったく他人事ではない」(高柳聡子「訳者あとがき」より)

 

訳者あとがき全文はこちら

 

著者情報

著者
エレーナ・コスチュチェンコ
Еле́на Костюче́нко
ロシアのジャーナリスト、LGBT活動家。1987年ロシアのヤロスラヴリ生まれ。いま世界でもっともよく知られるロシア人ジャーナリストのひとり。16歳から地方紙『北の地方』でジャーナリストとしての活動を始め、ロシアの主要独立系新聞『ノーヴァヤ・ガゼータ』で17年間にわたり報道に携わる。本書の英語版は2024年にプーシキンハウス図書賞を受賞したほか、収録記事が欧州報道賞など多数受賞している。LGBT活動家でもあり、ゲイ・プライドや抗議運動を続け、警察に数度拘束された。2022年2月24日、ロシアの侵攻当日にウクライナに入ったが、『ノーヴァヤ・ガゼータ』はコスチュチェンコの報道をうけて休刊 となった。現在はヨーロッパに亡命中で、今帰国すれば、 起訴され最長15年の懲役刑を受ける可能性が高い。

 

訳者
高柳聡子
(たかやなぎ・さとこ)
ロシア文学者、翻訳者。1967年福岡県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。おもにロシア語圏の女性文学とフェミニズム史を研究中。著書に『ロシア 女たちの反体制運動』(集英社、2025年)、『埃だらけのすももを売ればよい』(書肆侃侃房、2024年)、『ロシアの女性誌—時代を映す女たち』(群像社、2018年)、訳書にイリヤー・チラーキ『集中治療室の手紙』(群像社、2019年)、ローラ・ベロイワン「コンデンス─濃縮闇─」(『現代ロシア文学入門』垣内出版、2022年所収)など。他の訳書に、ロシアのフェミニスト詩人で反戦活動家のダリア・セレンコ『女の子たちと公的機関 ロシアのフェミニストが目覚めるとき』(エトセトラブックス、2023年)がある。